ポーカーで勝ち続けるには、必ずしも大きな勝負に挑む必要はありません。実は「スティール(Steal)」と呼ばれる、小さなポットを積み重ねるテクニックが非常に重要なのです。
なお「スチール戦略」と「スティール戦略」と2つの呼び方がありますが、どちらもポーカーでプリフロップでレイズし、他のプレイヤーをフォールドさせてブラインドのチップを奪う戦略を指します。どちらの表現も正しいですが、一般的に「スチール戦略」の方が使われる傾向があります。
ですが本記事では、スティール戦略として紹介します。特にトーナメントでは、ブラインドとアンティが増加する中で、いかに効率よくチップを補充するかが勝負の分かれ目です。そこで、スティール戦略の基本から実践例、さらにはそれに対抗する「アンチスティール戦略」まで、初心者にもわかりやすく解説します。
スティールとは?(ブラインドを奪う戦略)
スティールとは、レイトポジション(COやBTN)から前のプレイヤーが全員フォールドした状況で、ブラインド(SB・BB)に対してオープンレイズを仕掛けるプレイのことを指します。目的は明確、ブラインドを奪うことです。
ポットが小さくても、成功すればリスクの少ないチップ獲得につながるため、非常に効果的な技術です。

なぜスティールが重要なのか?
トーナメントでは特に、ブラインドとアンティがどんどん上昇していきます。単に待っているだけでは、自然にスタックが削られていくため、スティールによってチップを補充する動きが必要不可欠です。
- ブラインド1周分を稼げれば、大きなアドバンテージ
- トーナメントではブラインド&アンティの上昇が激しい
- スティール成功率が上がるほど、トーナメントの生存率が高まる
- スティールで1周分のブラインドを回収できれば、スタック維持に貢献
- 無駄なショーダウンを減らし、リスクを低くチップを増やせる
スティールは、長期的な生存戦略の一環なのです。

スティールに適した状況
スティールを狙うには、いくつかの好条件が重なると成功しやすくなります。
ポジションの影響(CO・BTNでのスティール)

基本的に、カットオフ(CO)やボタン(BTN)といったレイトポジションがスティールに最適です。前に誰も参加していない(オープンされていない)状況で、積極的にレイズしていきましょう。
相手の傾向(タイトな相手 vs ルースな相手)
ブラインド(SB・BB)が慎重なプレイヤー(タイト)なら、スティール成功率は格段にアップします。逆に、コールやリスチール(3ベット)を多用するルースな相手には注意が必要です。

ブラインドのサイズと影響
自分と相手のスタックサイズにも注意しながら、狙うタイミングを見極めましょう。
- 自分がミドル~ディープスタック:余裕を持ったスティールが可能
- 相手がショートスタック:リスチールやオールインのリスクがあるため注意
スティールに適したハンドレンジ
スティールでは、ある程度ハンドの幅を広げることがポイントです。以下はBTNからのスティールにおすすめのハンドレンジ例です。
カテゴリ | 具体的な例 |
ポケットペア | 22~99 |
スーテッドエース | A2s~A9s |
キングハンド | K9s~KQs |
クイーンハンド | Q9s~QJs |
スーテッドコネクター | 54s~T9s |
25BB、20BBバージョンのレンジ解説
ポジション | プッシュレンジ(%) | 代表的なハンド例 | Stack |
UTG | 6 | 77+, AJs+, AQo+ | 20BB |
HJ | 10 | 66+, ATs+, KQs, AJo+ | 20BB |
CO | 14 | 55+, A9s+, KJs+, QJs, ATo+ | 20BB |
BTN | 22 | 44+, A2s+, K9s+, Q9s+, J9s+, T9s, 98s, A8o+ | 20BB |
SB | 38 | 22+, A2s+, K2s+, Q2s+, J7s+, T8s+, A2o+, K7o+ | 20BB |
UTG | 4 | 88+, AJs+, AQo+ | 25BB |
HJ | 8 | 77+, ATs+, KQs, AJo+ | 25BB |
CO | 12 | 66+, A9s+, KJs+, QJs, ATo+ | 25BB |
BTN | 18 | 55+, A2s+, KTs+, QTs+, JTs, T9s, A9o+ | 25BB |
SB | 32 | 33+, A2s+, K5s+, Q7s+, J8s+, T8s+, A2o+, K9o+ | 25BB |
スモールポケットペア・スーテッドコネクターの活用
これらのハンドは、フロップで強い隠れたハンドを作れます。また、ブラフにも、バリューベットにも変化できるという意味で、スティール後の展開力が高いです。
相手のスタックサイズによる調整
相手がショートスタック(浅いチップ量)なら、オールインリスクが高まるため、少しだけレンジタイトめ(厳しめ)に調整しましょう。
スティール成功率を上げるためのプレイ
スティール成功の鍵は、プリフロップだけではありません。フロップ後の立ち回りも非常に重要です。
継続ベット(C-Bet)の有効活用
スティールしてプリフロップで相手にコールされた場合、フロップでC-Bet(コンティニュエーションベット)を打つことで、さらにポットを奪える可能性が高まります。ただし、ボードが極端にドローが絡みやすい場合(例えばJT9など)は注意しましょう。
フロップ後のプレイ(リスクと報酬の計算)
- 小さなリスク(小さめのC-Bet)で
- 大きなリターン(ポット獲得)を狙う
この「リスクと報酬」のバランス感覚が重要です。
ブラフとバリューベットのバランス
- 強いハンドではしっかりバリューを取りに行く
- 弱いハンドでも適切にブラフする
このバランスを取ることで、相手に読まれにくいプレイヤーになれます。

アンチスティール戦略(守る側の戦い方)
ブラインド側にいるとき、常にスティールの標的にされるのを防ぐためには、守り方にも工夫が必要です。
頻繁にスティールしてくる相手に対して
明らかに頻繁にスティールを仕掛けてくる相手には、3ベット(再レイズ)で強く抵抗したり、時にはオールインでプレッシャーをかける、そうした勇気を持ったカウンターが有効となります。
3ベットでカウンターを取るタイミング
特に相手がレイトポジションから毎回オープンしてくる場合、A9s、KTs、77以上などのハンドでアグレッシブに3ベットしていきましょう。
- スーテッドハンド(Q6s~、J8s~)や
- スーテッドコネクター(65s~T9s)などでコールすることで、相手にプレッシャーを与える

レンジを広げたディフェンスの考え方
時には、ブラインドディフェンスとして「スーテッドハンド」「コネクター系ハンド」も含めて広めにコールしていくことで、相手に簡単にスティールさせない圧力をかけることも大切です。
スティール実例ハンド紹介
ハンド例1:SB vs BB(スタック20BB)
- 状況: トーナメント中盤、あなたはSB、スタック20BB、BBは40BB
- アクション: 全員フォールド、あなたは ♠K, ♠9 を持っている
- 選択: プッシュ or フォールド?
- 解説: SB対BBで20BBあればK9sはギリギリのレンジ。相手がルーズならプッシュ可能。タイトな相手ならフォールドも選択肢
- 推奨: プッシュ(相手の傾向次第)
ハンド例2:HJで ♣A, ♦T(スタック25BB)
- 状況: あなたはHJ、スタック25BB、UTGフォールド、あなたのアクション
- アクション: オープンレイズ or プッシュ or フォールド?
- 解説: 25BBではAToはHJからオープンレイズが最もバランスが取れている。GTO的にはプッシュは少し過剰。
- 推奨: オープンレイズ(2.2BB程度)
ハンド例3:COで ♠7, ♦7(スタック20BB)
- 状況: あなたはCO、全員フォールド、スタック20BB。
- アクション: プッシュ or レイズ or フォールド?
- 解説: 20BBでCOから77はプッシュでもオープンでも選べる境界線。後ろにショートが多いならプッシュ推奨。
- 推奨: プッシュ(特に後ろにリスチール多い相手がいる場合)
まとめ
ポーカーにおいて、スティールは単なる小手先のテクニックではありません。
トーナメントを勝ち抜くための必須スキルです。
- 状況を見極めてスティールを狙う
- 相手の傾向を読む
- 必要ならアンチスティールで守る
これらを実践することで、自然とチップを増やせるプレイヤーを目指すことができます。小さなポットもしっかりと積み重ね、最終的に大きな勝利を目指しましょう。