ポーカーにおいて、スタックサイズは単なる「持ちチップ数」ではなく、あなたの取れる選択肢や相手からの印象を左右する戦略的リソースです。トーナメントでもキャッシュゲームでも、スタックの深さによってプレイスタイルを柔軟に変えることが勝敗を分けます。
本記事では、「ショート(30BB以下)」「ミドル(30~60BB)」「ディープ(60BB以上)」という3つの典型的なスタックサイズに分け、それぞれの戦略を解説します。
スタックサイズ別の基本理解
まずは、スタックサイズごとの特徴とプレイ可能な範囲を確認しましょう。
スタックタイプ | BB数(ビッグブラインド) | 特徴 |
ショートスタック | ~30BB | オールイン頻度が高く、リスク管理が重要 |
ミドルスタック | 30BB~60BB | アグレッシブなアクションと慎重さの両立が必要 |
ディープスタック | 60BB以上 | ポストフロップの技術が問われ、選択肢が豊富 |
ショートスタック戦略(~30BB以下)
プッシュ・フォールド戦略の基本
ショートスタックでは、選択肢が大幅に限定されるため、**オープンレイズよりもプッシュ(オールイン)**を主戦略にします。特に20BB以下では、迷いのないプッシュがICM的にも有利になる場面が多くなります。
実例:10BBでのプッシュ判断
あなたのスタック:10BB、BTN
ハンド:♠︎A, ♣︎9
ブラインド:1,000/2,000
→ プッシュが推奨される典型例(相手のリスチールリスクが低く、Fold Equityが高い)
ICMの活用
賞金圏が近いトーナメントでは、チップの価値が相対的に変化します。ICM(インディペンデント・チップ・モデル)を意識して、無理なコインフリップを避け、生存重視のプレイが重要です。

ミドルスタック戦略(30BB~60BB)
3ベット・4ベットの調整
このスタック帯では、レイズに対して3ベット(再レイズ)を仕掛けることが可能ですが、オールインとならないギリギリのサイズ感がポイントです。無理なブラフ4ベットはリスクが大きいため、相手のレンジに応じて調整しましょう。
ポストフロップでの慎重なプレイ
中途半端なスタック量では、フロップ後のベットサイズ選定がシビアです。ポットの膨張をコントロールしつつ、トップヒット・ミドルペアの扱いに注意が必要です。
バブル時のミドルスタック
特にトーナメントバブルでは、ミドルスタックが最も難しい立場にあります。チップリーダーに押され、ショートスタックとも戦いたくないため、明確なハンド基準と相手読みが求められます。

ディープスタック戦略(60BB以上)
アグレッシブなプレイが可能に
ディープスタックはポストフロップ以降のスキルが大きく影響します。セミブラフ、スロープレイ、オーバーベットなどを駆使し、相手のレンジを広く取ってブラフ成功率を上げる戦略が有効です。
スペキュレイティブハンドの価値上昇
スモールポケットペアやスーテッドコネクターのような「一発逆転系のハンド」が活きるのはディープスタックの醍醐味です。セットマイン・ストレートドローの価値が高まり、リスクを取る意義が生まれます。

スタックサイズに応じた注意点と調整
レイズサイズの決定
自分のスタックサイズが浅い場合、レイズ=コミットメントに近づくため、意図のあるサイズで統一しましょう。
参考例
- 10BB → オープン=プッシュ or ミニレイズに限定
- 50BB以上 → 2.2~2.5BBなど柔軟なサイズ選択可
相手のスタックサイズへの配慮
自分だけでなく、相手の持ちチップに応じて戦略を調整するのも重要です。
- 相手が10BB → スチールを意識しつつ、3ベットオールインに注意
- 相手が100BB → ポストフロップでのディープ戦に備えた慎重なライン構築

トーナメント vs キャッシュゲームの違い
項目 | トーナメント | キャッシュゲーム |
スタックの回復 | できない(飛んだら終了) | 補充可能 |
ICMの影響 | 非常に大きい | ほぼない |
バブルや賞金影響の有無 | 戦略に大きく影響 | 影響なし |
ショートスタック戦略の頻度 | 高頻度で求められる | 基本的にディープでの戦いが中心 |
まとめ
スタックサイズはポーカーにおいて最も重要な戦略要素の一つです。「持っているチップの量」によって、最適なプレイスタイルも大きく変わります。
- ショートスタックでは、生き残りとICMを重視したタイトプレイ
- ミドルスタックでは、レンジ調整と慎重なポストフロップ
- ディープスタックでは、クリエイティブかつ読みを活かしたプレイ
状況ごとの最適な戦略を身につければ、チップが増えたときも減ったときも自信を持ってプレイできるようになります。