ポーカーで継続的に利益を出すためには、ハンドの強さやポジションだけでなく、「どのタイミングで、どのサイズでレイズ・ベットするか」というサイズ戦略の最適化が欠かせません。サイズはただの数字ではなく、相手に与える圧力であり、情報の伝達手段でもあります。
本記事では、プリフロップとポストフロップの各局面における最適なレイズ・ベットサイズについて、GTO理論とエクスプロイト戦略のバランスを重視しながら、実戦的に解説します。
プリフロップのレイズサイズ最適化
オープンレイズの標準サイズ
ポジションやスタックサイズ、テーブルの傾向に応じて調整が必要です。基本は以下の通りです。
- ディープスタック(100BB以上):
→ 2.5~3BBのオープンが標準。より多くのポストフロッププレイが可能になるため、レンジも広めに設定できます。 - ミドルスタック(40~80BB):
→ 2~2.5BBが一般的。リスクと報酬のバランスが取りやすい。 - ショートスタック(15BB以下):
→ 1.5~2BB程度のスモールサイズが有効。プレッシャーを与えつつ、スタックを温存できます。 - ライブキャッシュ vs オンラインMTT:
ライブでは3BB前後の大きめオープンが多く見られる一方、オンラインでは2BB~2.2BBが主流。

実戦ポイント
ブラインドスチール狙いならスモールサイズ、フロップ以降の操作性を重視するならやや大きめを選択するのが合理的です。
ポジション | 標準オープンサイズ(BB単位) |
UTG~MP | 2.5BB |
CO~BTN | 2.0~2.2BB |
SB(初手) | 3.0BB程度(BBへ) |
- スタックが浅い(15BB以下)場合 → 2BB未満に調整
- スタックが深い(100BB以上)場合 → 2.5~3BBが推奨される場面も

スリーベットサイズの基本
スリーベットは、相手にポットコントロールさせないための攻撃的な選択肢。サイズ調整は以下が目安です。
- インポジション(IP):
→ 相手のレイズ額の約3倍
例:相手2BB → 自分6BB - アウトオブポジション(OOP):
→ 3.5~4倍に拡大して、ポジション不利を補う
例:相手2BB → 自分7~8BB - 相手がリンプした場合のアイソレートレイズ:
→ 4BB+リンプ1人あたり1BBを加算するのが基準(例:1リンプ→5BB)
実戦ポイント: スリーベットは相手のハンドレンジを狭め、ポストフロップでの主導権を握る手段です。特にOOPではサイズアップによりイニシアチブを強調することが重要です。

ポストフロップのレイズ・ベットサイズ最適化
フロップのCB(コンティニュエーションベット)のサイズ設定
ベットサイズはボードテクスチャに応じて柔軟に変える必要があります。
ドライボード(例:K♠7♣2♦)
- 推奨:ポットの25~33%
- 目的:広いレンジでCBを打ち、相手のミスを誘う。安く頻度高く打てる。
ウェットボード(例:J♥T♥9♠)
- 推奨:ポットの50~70%
- 目的:プロテクション&バリュー。ドローに対してしっかり圧力をかける必要あり。
ドライなら安く広く、ウェットならしっかり守る。相手のフォールドエクイティと自分のレンジ優位を同時に考慮しましょう。
ターン以降のベットサイズ
ターン
- レンジの偏りや強さの集中が生じるため、サイズにメリハリが必要。
- 一般的には**ポットの50~100%**の間で選択。
- ナッツ寄りのハンドでの大きめバリュー or セミブラフが有効。
リバー
- オーバーベット(120~150%)の導入が有効。
- 相手が中程度のハンドでコールをためらう状況を作り、最大バリュー or ブラフの成功率を上げる。
ターン・リバーでは「自分のストーリーと整合性が取れたサイズかどうか」が重要。無理なオーバーベットは逆効果になることもあるので注意。

レイズ最適化の実戦における応用ポイント
スタックサイズの管理
スタックサイズはレイズやベットサイズ戦略に直接影響を与えます。たとえば、ショートスタック(およそ15BB以下)の場合、ポストフロップでの自由度が限られるため、コンティニュエーションベット(CB)やブラフのサイズを小さく抑え、スタックのコントロールを優先することが求められます。
逆にディープスタック(100BB以上)では、プレイの選択肢が広がるため、バリュー・ブラフの両面でサイズを自在に使い分けられます。特にリバーでは、オーバーベットを戦略的に取り入れることが有効になる場面も多くなります。
相手タイプに応じた調整
対戦相手のタイプに応じたベットサイズの調整も重要です。タイトなプレイヤーには、大きめのサイズでしっかりとバリューを取り切る動きが効果的ですが、相手がフォールドしやすい傾向にある場合は、小さめのCBで無駄なリスクを避ける選択も有効です。
一方、ルースなプレイヤーは広いレンジでコールをしてくるため、ベットサイズを中程度に設定し、強弱を明確に分けたポラライズ戦略で対応するのが基本です。
GTO vs エクスプロイト
GTO(ゲーム理論最適戦略)とエクスプロイト(相手依存の戦略)のバランスも、レイズサイズ最適化には欠かせない要素です。GTOはどの相手にも理論上破綻しないプレイを保証してくれますが、実戦においては相手のプレイ傾向に応じて柔軟に戦略を調整することで、より高い期待値を得ることが可能です。
たとえば、GTO上は25%ポットのCBが最適とされる場面でも、相手がCBに対して極端に過敏な場合は、あえて40%ポット程度に引き上げてプレッシャーを強めるといった調整が有効です。


まとめ
レイズサイズは、ポーカーにおける「言語」です。そのサイズひとつで、バリュー・ブラフ・プロテクション・コントロールといった意図を伝えられます。
- プリフロップは、スタック・ポジション・相手に応じた柔軟なサイズ設計が重要。
- ポストフロップは、ボードの性質・自分と相手のレンジ・リスクと報酬を総合的に考慮したサイズ選択が求められます。
この記事を参考に、常に意味のあるサイズを使いこなす意識を持ち、プレイ全体のEV(期待値)を最大化していきましょう。