ポーカーにおける3ベット(3-bet)は、相手のレイズに対してさらにレレイズを仕掛ける強力な戦略です。しかし、どのハンドで3ベットすべきか、どのような状況で効果的なのかを理解することは、多くのプレイヤーにとって難しい課題です。
本記事では、3ベットレンジの基本概念から実践的な応用まで、包括的に解説します。ポジション別の戦略、相手のプレイスタイルに応じた調整方法、そして実際のゲームで使える具体的なハンド選択について詳しく説明していきます。
3ベットレンジとは何か?
3ベットレンジとは、プリフロップで相手のレイズに対して3ベット(リレイズ)を行うハンドの範囲を指します。効果的な3ベット戦略は、バリューハンド(強いハンド)とブラフハンド(弱いハンド)のバランスが重要です。
3ベットの目的
バリュー目的
- プレミアムハンドで最大限の価値を引き出す
- 相手の弱いハンドからコールを引き出す
- ポットサイズを大きくして利益を最大化する
ブラフ目的
- 相手のマージナルハンドをフォールドさせる
- イニシアチブを奪い主導権を握る
- 相手のレンジを狭めて有利な状況を作る
ポジション別3ベットレンジ戦略
アーリーポジション(UTG, UTG+1)からの3ベット
アーリーポジションからは最もタイトなレンジで3ベットします。
| ハンドタイプ | 具体例 | 理由 |
|---|---|---|
| プレミアムペア | AA, KK, QQ | 絶対的なバリューハンド |
| 強いブロードウェイ | AK, AQ(スーテッド) | 高いエクイティとドミネート力 |
| 限定的ブラフ | A5s, A4s(稀に) | ブロッカー効果とナッツポテンシャル |
ミドルポジション(MP1, MP2)からの3ベット
ミドルポジションでは若干レンジを広げることができます。
| ハンドタイプ | 具体例 | 頻度 |
|---|---|---|
| プレミアム | AA, KK, QQ, JJ | 100% |
| 強いエース | AKs, AKo, AQs | 100% |
| 中程度のペア | TT, 99(状況次第) | 60-80% |
| スーテッドコネクター | A5s-A2s(ブラフ) | 30-50% |
レイトポジション(CO, BTN)からの3ベット
ポジションアドバンテージを活かし、最も広いレンジで3ベットできます。
カットオフ(CO)からの3ベットレンジ
| ポジション | バリューレンジ | ブラフレンジ |
|---|---|---|
| vs UTG | AA-TT, AKs-AJs, AKo-AQo | A5s-A2s, K9s-K7s |
| vs MP | AA-99, AKs-ATs, AKo-AJo | A5s-A2s, K8s-K6s, Q9s-Q8s |
| vs CO | AA-88, AKs-A9s, AKo-ATo | A5s-A2s, K7s-K5s, Q8s-Q7s |
ブラインドからの3ベット
ブラインドポジションは特別な考慮が必要です。
スモールブラインドからの3ベット戦略
スモールブラインドからは、既に0.5BBを投資しているため、やや広めのレンジで3ベットできます。
| 相手ポジション | 推奨レンジ | 理由 |
|---|---|---|
| UTG | 9-11% | 相手のレンジが強いため控えめに |
| MP | 11-13% | バランスを重視したレンジ |
| CO/BTN | 13-16% | 相手のレンジが広いため積極的に |
相手タイプ別の3ベット調整
タイトアグレッシブ(TAG)相手への対応
TAGプレイヤーは適切なレンジでプレイするため、バリュー重視の戦略が効果的です。
調整ポイント
- ブラフ頻度を下げる(20-30%)
- プレミアムハンドでのバリューを重視
- ポラライズドレンジを避け、リニアレンジを採用
ルースアグレッシブ(LAG)相手への対応
LAGプレイヤーは広いレンジでプレイするため、ブラフ頻度を上げることができます。
推奨戦略
- ブラフ頻度を40-50%に増加
- より多くのハンドでバリューベット
- 4ベットへの対応も事前に計画
ナイト/フィッシュ相手への対応
弱いプレイヤーに対してはバリュー重視の戦略が最適です。
| 調整項目 | 推奨アプローチ | 効果 |
|---|---|---|
| ブラフ頻度 | 大幅に削減(10-20%) | 無駄な損失を防ぐ |
| バリューハンド | 範囲を拡大 | より多くの価値を抽出 |
| サイジング | やや大きめ | 相手の判断ミスを誘発 |
3ベットサイジングの戦略
標準的なサイジング
インポジション
- 2.5-3.0倍のサイジングが標準
- 相手のレンジに応じて調整
アウトオブポジション
- 3.0-3.5倍のより大きなサイジング
- ポジションディスアドバンテージを補償
相手別サイジング調整
| 相手タイプ | 推奨サイジング | 理由 |
|---|---|---|
| タイトプレイヤー | 2.5-2.8x | フォールドを誘いやすい |
| ルースプレイヤー | 3.2-3.8x | より多くのバリューを抽出 |
| ポストフロップ上手 | 大きめ | 難しい判断を強要 |
フロップ以降の継続戦略
Cベット戦略
3ベットポットでのCベット戦略は通常のポットとは異なります。
高頻度Cベットボード
- A-high ボード(A-8-3など)
- キングハイボード(K-9-4など)
- ドライボード全般
Cベット控えめボード
- ミドルコネクテッドボード(8-7-6など)
- ローペアボード(4-4-Jなど)
ターン・リバー戦略
バリューハンドのライン
- トップペア以上:積極的にベット
- ミドルペア:相手のアクションに応じてコントロール
- ドロー:セミブラフかポットコントロール
実践的な3ベットレンジ例
現実的なレンジ構築
ボタンvs カットオフ 3ベットレンジ例
バリューレンジ(60%):
- AA, KK, QQ, JJ, TT, 99, 88(状況次第)
- AKs, AKo, AQs, AQo, AJs, AJo(相手次第)
ブラフレンジ(40%):
- A5s, A4s, A3s, A2s
- K9s, K8s, K7s(スーテッドのみ)
- Q9s, Q8s(強い相手には除外)
マルチウェイポットでの調整
マルチウェイになる可能性が高い状況では、レンジをタイトに調整します。
| 状況 | レンジ調整 | 理由 |
|---|---|---|
| 複数のコーラー存在 | バリュー重視に変更 | エクイティ実現困難 |
| ビッグブラインド参加可能性 | プレミアム重視 | マルチウェイ対応力 |
よくある3ベットの間違い
頻度に関する間違い
過度な3ベット
- 弱いハンドでの無謀な3ベット
- ポジション無視の一律3ベット
- 相手タイプを考慮しない画一的戦略
不十分な3ベット
- プレミアムハンドでのスロープレイ過多
- 有利な状況での機会逸失
- バリューの取りこぼし
レンジバランスの問題
多くのプレイヤーはバリューに偏ったレンジや、逆にブラフに偏ったレンジを構築してしまいます。
最適なバランス
- バリュー:ブラフ = 60-70% : 30-40%
- 相手の4ベット頻度に応じて調整
- 長期的な利益最大化を重視
まとめ
3ベット戦略の習得には、ポジション、相手のプレイスタイル、ボードテクスチャー、そして自身のイメージなど、多くの要素を総合的に判断する能力が必要です。本記事で説明したガイドラインを参考に、実戦で様々な状況を経験し、徐々に自分なりの3ベット戦略を構築していってください。
重要なのは、機械的にレンジに従うのではなく、その時々の状況に応じて柔軟に調整することです。継続的な学習と実践を通じて、3ベット戦略をマスターし、ポーカーでの勝率向上を目指しましょう。

